2019年1月31日木曜日

エージング効果を調べてみた

エージングとは経時、経年、またそれによる変化、言わば「熟成」の意。悪い言い方をすれば「老化」のことです。
スピーカーやヘッドフォンにおける「慣らし運転」となぞらえることもありますが、衣服などを着込んでいくうちに身体に馴染むのと同じように、出力音声にドライバー動作が馴染むことで再生音が安定していく一連の変化を一般的に「エージング効果」などと呼ばれます。

ヘッドフォンやスピーカーなどに関する巷のレビューでもこの効果に触れられることも多いもので、例えば「購入当初、何か物足りない音がエージングを進めることによって劇的に良化した」などとにわかに信じがたいレビューを目にすることもあります。ということは元々が粗悪なものほどその効果が判りやすいということでしょうか?
そうしたことを踏まえ、Roland RH-300を模した粗悪な中華コピー商品として知られるNEEWER NW-3000という安物ヘッドフォンを素材として、エージングによる変化を実践的に調べてみることにしました。

測定誤差を最小限に抑えるため検証の間ヘッドフォンを測定装置に固定し、24時間ごとに4日間(96時間)の特性グラフ出してみました。
方法論には諸説ありますが、そもそもエージングという意味を尊重しあくまで自然な使用状況を想定。再生内容、設定については耳に痛くならない程度の気持ちやや大きめな音量に合わせ、ポップス、ロックを中心に他様々なジャンルの音楽をランダムに流してエージングを進めました。


購入開封直後

1日後

2日後

3日後

4日後

結果はこの通り。細かく見ればそれぞれ微差は見られますが、これは測定誤差として生じるレベル。起伏の量や凹凸の位置がずれるなどの明確な違いが見てとることができないことから音質的変化は極めて希薄と思われますが、実際の音声に違いが見られるのか、以下に初日と4日目の音声を上げておきますので聴き比べてみてください。





音質的な違いがお分かりでしょうか?

正直、個人的にはまるで違いが判りません。が、もし仮にこの差が判る人がいたとして、これほどの微差を「エージング効果」などと捉えて論ずる意味があるかと言えば大いに疑問の湧くところではありますね。

一応の結論として、この調査ではエージングによる「変化は希薄」あるいは「ほぼ変化無し」という結果でしたが、このような効果、変化には時間を要する場合もあるとも言われてますし、この結果だけをみて「効果が薄い」と言い切ってしまうのもどうかとも思いますので、また機会を見て調査してみたいと思います。
ただこれも事実の一例として踏まえ、必ずしもエージングによって音質的変化が生じ得るものではないという認識は持っておくべきでしょう。

最後にこれは個人的な見解ではありますが、今回の検証では自分自身で使用しなかったこともあり実感が強いのですが、やはりこうした効果が感じられる背景には「慣れ」「順応」という自分自身の感覚変化が大きく影響しているのではないかと思いました。もし使いながら調べていたら耳が慣れてしまい、この悲惨な音質にも関わらず「悪くもないかも?」などと迷ったと思います。

どんな道具にしても最初は使いづらさや粗を感じたりもするものですが、使い続けることで徐々に慣れ、いつの間にか順応してしまうものです。同様にヘッドフォンやスピーカーの音が使っていくうちに良くなったと感じられるのも、出力装置側の物理的変化というよりもむしろ人間側の「順応」による感覚的な変化が大きいと考えるのが自然な気がします。こうしたエピソードでは良化傾向の話ばかりが聞かれる一方で、悪化した例を全く耳にしないのもそうした裏付けではないでしょうか。

2019年1月28日月曜日

Sennheiser HD 4.30i

ゼンハイザー HD 4.30i (2016年発売)




構造:密閉ダイナミック型
ドライバー:非公開
インピーダンス:18Ω
最大入力:非公開
再生周波数帯域:16〜22,000Hz
出力感度:112dB
重量:約152g (コード含まず)
販売価格:約9,000円〜

HD 4.30i 周波数特性(旧ダミーヘッド)


寸評:
比較的全体的に平滑な特性で中〜高域は自然で素直な出音を醸すが、ワイドにカバーする超低域の量がいささか過度で、深いベースを鳴らすソースではブーミーで耳障り。ベースを抑えるイコライジングで容易にバランスが整うが、その手間が少々勿体無い。
装着性については、シリーズ統一のイヤーパッドはやはり窮屈。構造的に装着角度調整の融通は効くが、ポジションの決まりの悪さやフィット感の甘さが若干気になる。
プラ+ゴムのヘッドバンドは折りたたみ式で、同シリーズHD 4.20Sよりもひと回り太いがその分アーチのバネ力も強め。
ケーブルはシリーズ特徴の特殊な右側出しで、着脱可能なタイプ。付属ケーブル(マイク)仕様の異なるApple用の機種名末尾「i」、Galaxy用の「G」が用意されており、またそれぞれ白と黒のカラーバリエーションがある。

当機をベースとしたワイヤレス仕様のHD 4.40BT、更にノイズキャンセル機構を搭載したHD 4.50BTNCが後発展開している。