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2019年4月20日土曜日

イヤホンを調べてみた

ちょっと余興で、手元にあるイヤホンの特性を調べてみました。

長年Apple遣いなだけにApple率が高いです。また、そもそも個人的にイヤホンを好まないため手駒が少ない上に、バイノーラルマイク付きイヤホンといった特殊なものが含まれますが、その辺の参考としてご覧いただければと思います。

【3.5mmプラグタイプ】

AKG EO-IG955

Galaxy付属のイヤホン。比較用に入手したもの。
中高域までの密度はあるが、高域が伸びずこもったような出音。

AKG EO-IG955 周波数特性

Apple EarPods with 3.5mm Headphone Plug

別機にて出音の印象の違いが感じられたため再調査。二種類サンプルを上げますが、ケーブルの刻印からいずれも中国製造の純正品であることを確認済み。

当初掲載していたのがサンプルAで初期ロットのものですが、そもそも元々少々こもった感じで印象の良い音ではなかった記憶があり、また実質ほとんど使用していないことから製造時期やあるいはロットによる音質差異が大きい感じ。
サンプルBの方がメーカーの意図した音質と思われますが、こちらはLightningのものに近い鳴りで、こもるような感じもなくバランスよくスッキリと聴かせます。

サンプルA:初期ロットiPhone5 or S?付属品

サンプルB:新たに入手したiPhone7付属の未使用品


Apple In-Ear Headphones with Remote and Mic

旧Appleデバイス向けの純正アップグレードカナル型イヤホン。
かなりフラットな鳴りで耳に優しい素直な出音が心地よい。当初は素直に良い音と感じたが、しかしそれでも高域の量感や伸びに物足りなさは拭えず。

Apple In-Ear Headphones with Remote and Mic 周波数特性

audio-technica ATH-CK50

一昔前に買った安物イヤホン。
非常に耳に痛く刺さるシャカシャカな出音でかなり不快。
audio-technica ATH-CK50 周波数特性

Roland CS-10EM

バイノーラルマイク付きイヤホン。
あくまでマイクがメインなのかも知れないが、低音盛りのモタついた出音で高音も伸びがない。

CS-10EM Frequency Response
Roland CS-10EM 周波数特性


【Bluetoothタイプ】

i7S

製造メーカーもよくわからないAirPodsのパチモンで、数字違いの改良進化版が続々登場しているが、初代のこれはなぜか一回り巨大。
出音は旧EarPodsに類似した感じで良いというほどではないが悪くもない。
i7S 周波数特性

Anker Zolo Liberty

やや大きめな補聴器形状のモデル。評判通り確かに印象の良い音ではあるが、高域ピークが目立ちシャリ付きがちで、さらに上の超高域がさっぱり伸びないのが残念。
Anker Zolo Liberty 周波数特性


【Lightningタイプ】

Apple EarPods with Lightning Connector

現Appleデバイス標準イヤホン。iPhoneXS付属品。
旧EarPodsに比べバランスがかなり改善され、癖っぽさのない素直な出音はそのままに高域まで通るスッキリとした実に良質な出音に仕上がっている。
欲を言えば高域にもう一盛り欲しいが、イヤホンとしては十分に高いトータル性能。安全な常用を考えても、何かと指摘の多いカナル型でないことがむしろ◎。

Apple EarPods with Lightning Connector 周波数特性


Scenes Lifelike Don't Panic! (SS-101)

Appleデバイス向けのバイノーラルマイク付きイヤホン。別売りのPCアダプターを介すことでパソコンでもステレオマイク(イヤホンは機能せず)の利用が可能。
線の細い鳴りで中高域が強め。だがRolandのものよりは断然マシな音。

Scenes Lifelike Don't Panic! (SS-101) 周波数特性


以上です。


最後に、カナル型イヤホンのイヤーチップ (イヤーピース)について少し。

昨今評判の低反発ウレタンチップを使用してみたことがありますが、それまでしっかり適正なシリコンチップを使用できていたということなのでしょう、特に音質改善が得られることもなく、むしろわざわざ手で潰さなければならない一手間が鬱陶しいと感じ、あっけなくボツとなりました。
ついでに言えば、表面に粘着性があるので確かに留まりは良いですが、反面非常に汚れやすいのが嫌なところで、潔癖でなくとも他人に貸すのは躊躇してしまいます。。こうした事情もあってか3ヶ月程度で交換せよとのメーカー推奨ですが、シリコン製の数倍高額なのに、それも頻繁に交換とはバカバカし過ぎます。

しっかり耳に合ったチップを使用してさえいれば正常な音は得られますし、それがそのイヤホンにとっての最良の音質です。素材を変えたところで音質改善が見込めるものではありませんので、その辺はくれぐれも勘違いされないように。

2019年3月29日金曜日

MOMENTUM On-Ear VS CPH3000

スタイリッシュで高音質のコンパクト機として人気を博すMOMENTUM On-Earと、非常に安価ながらに高品位なサウンドと評判の高いCLASSIC PRO CPH3000。一見よく似た風貌で出音までもが似ているとの評判も販売価格には大きな差のある2機種ですが、どれほどの類似性あるいは違いがあるのか気になる人も多いようなので、比較しやすいようまとめてみます。

■周波数特性カーブの比較

まずは周波数特性グラフを並べてみます。

Frequency Response
MOMENTUM On-Ear 周波数特性

Frequency Response
CPH3000 周波数特性
いずれもほぼ同じ帯域と規模のくぼみのある二つ山型カーブを描いており、この全貌からも概ね似通った出音傾向であろうことはお察しいただけるでしょう。ただ細かく見れば超高域、超低域の両端の減衰量に違いが見て取れますし、また中高域付近に見られるアップダウンの流れも異なることから、音域のワイド感や明瞭感などそれなりに違いがあろうことも窺えます。

■実音の比較

現物の音を聴かせるわけにはいきませんが、こちらのサウンドサンプルからも十分に違いが感じていただけますので、とりあえず聴き比べてみてください。






まず一聴して低音の出方の違いに気付くのではないでしょうか。MOMENTUM OEは深いところまでたっぷりと鳴らしてきますが、これに比べてCPH3000は超低域が薄めなため少し軽い音に感じられます。
全体像としてはCPH3000の方が中域密度の高い音で明るい印象で鳴らしますが、この辺は中高域の処理の違いや低音バランスの影響でしょう。金物の鳴りに耳を傾ければ高域の伸びや響きの違いにも気づくと思いますが、そうした点を比べてみると音域の広さ、表現力の豊かさ共にやはりMOMENTUM OEに分がある印象ではあります。

ちなみに実機比較の所感としては、通常使用で何気に聞き流せばさほど大きな違いは感じられず、特に低音はサンプルほど明確な差を感じません、しかし中高域の鳴らし方や高域の伸びの違いは殊の外明確で、MOMENTUM OEは超高域までしっかりと且つスッキリと鳴らしてきますが、CPH3000はやはり特性グラフの示す通りで超高域の伸びが乏しく、いささか再生レンジの狭さが否めないというのが正直な感想です。
ただ先にも述べたように、聞き耳を立てなければさほど気になるほどの違いはないということを今一度付け加えておきます。

■その他の比較

重量は約10gほどMOMENTUM OEが軽いですが、いずれも小型軽量なので気にするまでもないでしょうか。
装着感はいずれも側圧により挟んで留まっている感じで、圧迫感、耳への負荷は強めなため掛け心地はお世辞にも良好とは言えません。
いずれもベロアタイプのイヤーパッドが使われており、MOMENTUM OEの方が肉厚で内口径も小さめですが、柔軟性はCPH3000が少し柔らかく耳への当たりは優しめです。
ベロアなのでいずれも音漏れはそれなりにありますが、MOMENTUM OEは抜きの大きい構造によりセミオープン型かと疑うほど漏れが多いので、野外使用には注意が必要でしょう。

2019年2月9日土曜日

RH-300のレシピ 〜粗悪クローンを本物に!?

RH-300とNW-3000[改)

調べてみるとRoland RH-300を模したコピー/クローン製品を出しているのはなんと十数ブランドにも登るようですが、現在知るところで国内で最も安価に手に入ると思われるのが、安価な撮影用サプライ製品メーカーとして知られるNEEWERのNW-3000。Amazonで3,000円足らずの格安で販売されています。

公称スペック上は本家を凌ぐ数字が堂々と刻まれておりますが、これは他のクローン製品に同じ記載があるようなのでそこから流用したものでしょう。実際の出音は価格相応とでも言いましょうか、高音域に伸びのない篭った音。下グラフが示すように右肩下がりがその原因ですが、そもそも左右ユニットのバランス差がパーツ選定の雑さを垣間見る部分でもありますね。やはり安物はそれなりということでしょうか。


[NEEWER NW-3000仕様]
ドライバー:45mm
インピーダンス:40Ω
最大入力:1,800mW
再生周波数帯域:10〜26,000Hz
出力感度:98dB

元々のNW-3000特性

基準規定のない記載スペックの内容にそもそも信憑性など望めるものではありませんし、量こそ乏しいものの高音域が出ていないとは言い切れないため詐称とまでは言いづらいですが、音質的な違いを考えるとこの公称スペックに納得いかない部分は大きいですね。

などと言いながらもこのNW-3000を入手してみた次第ですがw、その理由は二つありまして、まず一つが先日綴ったエージング効果の検証のため。そしてもう一つが改造を目論んでのものです。
実は外装が朽ちてもはや使い物にならないaudio-technica ATH-M50が手元にあったので、このドライバーの再生利用を企んだわけですが、この機種のOEMともささやかれ、バッフル周辺構造が同じRH-300のクローンなら容易に換装可能ではなかろうかと睨んだわけです。
もちろんNW-3000自体が真っ当なサウンドを醸してくれるならそれはそれで使用も考えてはいましたが、前述通りの残念すぎる出音なので早速換装作業開始です。

工作経緯の写真でも残しておけばよかったのですが、これを綴る予定もなかったので配線確認用に撮った写真のみでご勘弁を。

NW-3000のドライバー背面

ATH-M50のドライバー背面

【ドライバーの移植】

先ほども書いた通りこれら機種はバッフル構造が一緒なので、ドライバーユニット周辺のパーツ交換は容易で、プラスドライバーとハンダゴテがあれば2〜30分で済む作業です。

ATH-M50とRH-300のドライバーは同一のものとの噂もあったので、構造的にもコピー元となるRH-300に近い出音を期待していたのですが、結果はほぼ元のATH-M50にほど近い出音になりました。
よくよく調べてみればインピーダンスなどドライバースペックが異なる部分もあるので、コイルなどチューニングの違いがあるのかも知れません。またドライバーユニット背面処理にも違いが見られ、RH-300はNW-3000同様に薄いスポンジで覆われていますが、写真ではカバーで見えませんがATH-M50はよりフィルタリング効果が大きいであろうドーナツ状のフェルトで覆われており、その辺の違いが特性差として出ているのかも知れません。


M50ドライバーに換装したNW-3000特性

【イヤーパッド変更で微調整】

ATH-M50のややもたっとした低重心サウンドは個人的に好みではないため、RH-300に近い音に変わらないものかと最も手軽に音質変化が試せるイヤーパッドの交換を試みました。
トーンバランスの調整方法はいろいろとありますが、低域抜きに際して効果的な順に挙げてみますと以下の通り。


●合皮イヤーパッドなら音の抜けるベロア調のものへ変更する。
 高音域はそのままに、低音域が大きく削られます。

●ベースポート(ベント/ダクト/ハウジング背面に抜き穴)があればテープで塞ぐ。
 空気のバネ効果によりドライバーの振幅が抑制され、低域の音量が抑えられます。

●内口径の大きいイヤーパッドに変更する。
 低音部に絞った抑制に効果的。

●ドライバーユニットを覆うスクリーンがある場合は除去する。
 ユニットを覆うスクリーンは高音抑制効果があり、これを取り払うことでバランスが相殺され低域が減ります。ただし素材によって効果に差があり、メッシュや薄いスポンジではほとんど変化はありません。

●厚みのあるイヤーパッドへ変更する。
 これは中音域が弱まる効果があり、ドンシャリ傾向に進んで奥行き感が増します。



今回はもたつきの改善を試みたかったので5mmほど肉厚なパッドに変えて耳までの距離を稼いでみましたが、その結果が以下の通り。耳までの距離が離れることで中〜低域が微妙に抜け、RH-300そのものとは行かずとも低音域のスッキリとした明るめの出音に変わりました。


更に厚めのイヤーパッドに変えたNW-3000特性


と、一応これでひと段落しましたが、更なる目論見は続くのでした。。。

2019年1月31日木曜日

エージング効果を調べてみた

エージングとは経時、経年、またそれによる変化、言わば「熟成」の意。悪い言い方をすれば「老化」のことです。
スピーカーやヘッドフォンにおける「慣らし運転」となぞらえることもありますが、衣服などを着込んでいくうちに身体に馴染むのと同じように、出力音声にドライバー動作が馴染むことで再生音が安定していく一連の変化を一般的に「エージング効果」などと呼ばれます。

ヘッドフォンやスピーカーなどに関する巷のレビューでもこの効果に触れられることも多いもので、例えば「購入当初、何か物足りない音がエージングを進めることによって劇的に良化した」などとにわかに信じがたいレビューを目にすることもあります。ということは元々が粗悪なものほどその効果が判りやすいということでしょうか?
そうしたことを踏まえ、Roland RH-300を模した粗悪な中華コピー商品として知られるNEEWER NW-3000という安物ヘッドフォンを素材として、エージングによる変化を実践的に調べてみることにしました。

測定誤差を最小限に抑えるため検証の間ヘッドフォンを測定装置に固定し、24時間ごとに4日間(96時間)の特性グラフ出してみました。
方法論には諸説ありますが、そもそもエージングという意味を尊重しあくまで自然な使用状況を想定。再生内容、設定については耳に痛くならない程度の気持ちやや大きめな音量に合わせ、ポップス、ロックを中心に他様々なジャンルの音楽をランダムに流してエージングを進めました。


購入開封直後

1日後

2日後

3日後

4日後

結果はこの通り。細かく見ればそれぞれ微差は見られますが、これは測定誤差として生じるレベル。起伏の量や凹凸の位置がずれるなどの明確な違いが見てとることができないことから音質的変化は極めて希薄と思われますが、実際の音声に違いが見られるのか、以下に初日と4日目の音声を上げておきますので聴き比べてみてください。





音質的な違いがお分かりでしょうか?

正直、個人的にはまるで違いが判りません。が、もし仮にこの差が判る人がいたとして、これほどの微差を「エージング効果」などと捉えて論ずる意味があるかと言えば大いに疑問の湧くところではありますね。

一応の結論として、この調査ではエージングによる「変化は希薄」あるいは「ほぼ変化無し」という結果でしたが、このような効果、変化には時間を要する場合もあるとも言われてますし、この結果だけをみて「効果が薄い」と言い切ってしまうのもどうかとも思いますので、また機会を見て調査してみたいと思います。
ただこれも事実の一例として踏まえ、必ずしもエージングによって音質的変化が生じ得るものではないという認識は持っておくべきでしょう。

最後にこれは個人的な見解ではありますが、今回の検証では自分自身で使用しなかったこともあり実感が強いのですが、やはりこうした効果が感じられる背景には「慣れ」「順応」という自分自身の感覚変化が大きく影響しているのではないかと思いました。もし使いながら調べていたら耳が慣れてしまい、この悲惨な音質にも関わらず「悪くもないかも?」などと迷ったと思います。

どんな道具にしても最初は使いづらさや粗を感じたりもするものですが、使い続けることで徐々に慣れ、いつの間にか順応してしまうものです。同様にヘッドフォンやスピーカーの音が使っていくうちに良くなったと感じられるのも、出力装置側の物理的変化というよりもむしろ人間側の「順応」による感覚的な変化が大きいと考えるのが自然な気がします。こうしたエピソードでは良化傾向の話ばかりが聞かれる一方で、悪化した例を全く耳にしないのもそうした裏付けではないでしょうか。